企業情報

社長メッセージ

野村ホールディングス株式会社 取締役兼代表執行役社長
野村證券株式会社 代表取締役社長 奥田 健太郎

金融の果たすべき役割

過去の歴史をみると、パンデミックは「グレートリセット」、国の経済や社会機構を組み直す大きな契機となったと言われています。今回の新型コロナウィルスに端を発する一連の混乱により、世界中の人々が「非日常」の暮らしを余儀なくされ、価値観が大きく揺さぶられることになりました。生活、学習、仕事、移動、人とのかかわり、これまで当然と思っていた「日常」が大きく変化し、今まで当たり前だと思って疑わなかったことがそうではなかった、ということに気づかされました。
 このような環境だからこそ、金融の果たすべき役割は大きくなっています。そして、野村グループの社会的使命は変わりません。それは、「資本市場を通じて、豊かな社会の創造に貢献していく」ということです。当社の企業価値向上と社会全体の持続的な成長は同じ道の上にあると考えています。

そもそも、企業は社会に役立つ商品やサービスを提供することを目的に生まれ、成長してきたという歴史があります。実際、ビジネスの結果として社会課題の解決に寄与している事例としてスタートアップがグローバルに増加しています。ビジネスと顧客の満足度と課題解決のベクトルが同じ方向を向いているということです。それらの企業では上場前に多額の出資を集めているところも少なくありません。今後、そういった企業が次々に立ち上がり、投資、リスクマネーの供給によって大きく成長していくことが期待されます。 当社としても、グローバルな金融機関として投資家と企業をつなぐリスクマネーの供給をはじめ、経済の持続的成長のために貢献していきたいと考えています。社会課題や環境問題を解決していく上で、寄付やボランティアだけでは新しい価値の創出にはなりません。企業がビジネスを営むことで同時に、社会課題を解決していく仕組みが求められています。

野村グループの次のステージ

野村グループでは、「今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」という考えのもと、その実現に向けた戦略の一つとして「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」を打ち出しています。 「次のステージ」とは、「今と違うどこか」というような漠然としたものではなく、私たちが「目指す姿」に他なりません。5年後、10年後、グループとしてどういう姿を目指すのか? どのようなビジネスモデルに変えていくのか? これが「目指す姿」であり、現状の延長線上にない「今立っている場所とは違うステージ」です。さらに、「目指す姿」は決して自分たちだけで完結するものではありません。なぜなら、私たちが目指しているのは「お客様に寄り添い、お客様の悩みや課題の解決、夢や目標を実現するお手伝いをする」ことにあるからです。お客様から「あなたに相談してよかった」「いっしょに仕事ができてよかった」と言っていただけることが、私たちの喜びであり、誇りでもあります。
 夢や目標を実現するための資産運用、企業を大きくするための資金調達やM&Aなど、お客様の目指す姿の実現にむけた十分な、さらに期待を超えるサポートをさせていただくために、私たちも先を見据えた飛躍が必要です。従来の発想にとらわれることなく、お客様のために将来のビジネスを考えるという思いから「今とは違うところ、次のステージ」と言っています。今後は、資産運用、資金調達にこだわることなく、さらに金融という枠を越えた発想すら必要になってくると考えています。私たちにとっては「非連続的な成長」と言っていいかもしれません。

様々なビジネス分野でデジタルの活用が進んでいますが、私たちの目指すゴールはデジタル化そのものではなく、お客様にとっていかに有益であるかです。そこで重要となるのが「コンテンツ」と「人」です。既存の金融機関だけではなく、IT企業などの新たな業態とも、競争が激化することが想定される中、ここでお客様に選ばれるために必要となるのが、「コンテンツ」と「人」なのです。
 当社のビジネスにおいて「人」の重要性は変わらないものの、求められる資質は変わってくるでしょう。商品知識だけでなく、お客様に寄り添ってアドバイスできるコンサルティング能力などの付加価値が問われることになります。その意味でも「人」は差別化の大きな武器になります。AI(人工知能)が進歩すると、誰もが自分の好みを知り尽くした個人の秘書を持てるようになる、と言われています。資産運用に関するアドバイスも、近い将来AIが行うようになるでしょう。それほど遠い話ではありません。知識やスピードでは人間はAIにはかないません。では、人にしか出来ないことは何でしょうか、それを考えないといけない時代になってきた、ということです。

飛躍のための多様性

私は社員に対して常に「新しいことに挑戦しよう」と言っています。新しいことに挑戦するためには、それを認め、挑戦する人の背中を押す環境が必要です。そのための重要な要素の一つに、「ダイバーシティ(多様性)」があります。これがなければ、新しいことを始める、まして新しいステージへ飛躍することなどできません。
 均一な組織では新しいことにもチャレンジせず、おかしいと思っても、それを「違う」とも言えない。人や組織は何もしないでおくと、無意識のうちに「同調」してしまいますが、これは心理学的にも仕方がないことのようです。ダイバーシティは企業の存続にもかかわる重要な問題です。だからこそ、様々なバックグラウンドをもった人材に当社に加わって欲しいと考えています。
 一方で、単に多様な人材が加わるだけで、組織が活性化するわけではありません。誰もが活躍できる環境がなくては、何も変わりません。そういった環境を整えることが、私を含めたマネジメントの重要な役割だと認識しています。

皆さんへのメッセージ

当社には、社員のその時点の実力よりも、一段上の仕事を任せる伝統があります。特に若い社員には先入観のない、まっさらな発想で、すすんでいろいろな経験を積んでもらいたいと思っています。何が自分にあっているのか自分では分からないことも多いでしょうし、どういう仕事があるのかも知らないでしょう。様々な経験を経て、本当に自分がやりたいことが見つかれば、その専門性をとことん磨いていくことも素晴らしいことだと思います。成長は直線的ではありません。どこかで非連続的に飛躍するときがあるはずです。そのためには自分が思っている限界を突破することが必要です。あとから振り返り『あの時がそうだった』と思える、そういう瞬間を経験してほしいと思います。

野村グループの最大の財産は人材です。当社は、約26,000人が集まる、グローバルなチームです。社員の国籍は90ヶ国に及んでいます。社員一人ひとりの成長が、当社の価値を高めることに繋がります。多様性のある組織で、切磋琢磨することを楽しみ、わくわくしながら、誇りを持って仕事に取り組んでほしいと思っています。
皆さんの力を、野村グループというグローバルなフィールドで存分に発揮していただき、自らの成長とともに社会全体の持続的な成長を実感してもらいたいと考えています。