も、
だ。
千秋 幸司
ホールセール部門 グローバル・マーケッツ
2008年入社

他の証券会社が組成して販売し、不良債権化した仕組債を担当する案件。通常の業務とは異なるものの、ビジネスになると感じ、依頼を受諾。その結果見えたものは、グローバル市場で培った専門性を国内の顧客に還元するという、所属する部署と自分自身の新しいビジネスの可能性だった。

「この状況、どうにかなるでしょうか」

地方支店の営業から依頼の電話が入ったのは、4年前のことだった。聞けば、担当しているお客様(地方銀行)が保有している仕組債が不良債権化し、担当者が対応を思案しているとのこと。競合他社が組成した商品で、相当の金額である。組成会社に相談しても、「すみませんが、どうにもなりません」と埒が明かないため、担当者は他の証券会社に依頼しようとしていた。そして「野村證券なら、何とかしてくれるのではないか」と、当社の営業に声をかけてくださったのである。実のところ、当初は自身の部署が担当する案件とは思えなかった。「私のいる部署の主要業務は、国内外のクレジット市場(社債やデリバティブ)や海外顧客の売却案件等を見ながら、日本の投資家にフィットしそうな投資機会を、仕組債や仕組取引という商品にして紹介・提供するというものでした」。そもそも自社で販売した商品ではない。しかし、電話で概略を聞いた瞬間、「ビジネスの可能性がある」と直感した。組み合わされた仕組債のパーツが頭の中で分解され、おおよそのリスクや契約内容が理解できたからである。「それに、『たとえビジネスにならなかったとしても、少なくともお客様のお役には立てそうだ』という想いがありました」。「わかりました。先方がお持ちの資料を送ってください」。電話を切ったときには、すでにプロジェクトの進め方を考え始めていた。

「プロとして、お客様の力に」

「これは確かに、専門性を要する案件かもしれない」。送られてきた資料に目を通すと、仕組債を発行しているのが、英国領ケイマン諸島にあるSPC(特別目的会社)であることが判った。そして、複数の関係者の間に契約関係や権利関係が存在している。「まずは、発行体であるSPC、そして、商品にスワップ契約が組み込まれているため、その取引相手方である証券会社、SPCの資産を海外で保管しているカストディアン、債券の全体保全を司るトラスティー、債券の保有者である投資家(地方銀行)の5カ所。加えて、野村證券が地方銀行から債券を売却していただいた暁には、我々が6カ所目の関係当事者となるという状況でした」。国内の投資家が、海外の権利保有者とコンタクトを取って事態を処理することはだいぶ手間がかかってしまう。「通常業務と同時並行でこの案件に取り組みたい」と上司に相談すると、「お客様のお役に立てて、ビジネスの可能性もあると思うなら、やってみたらいい」と、すぐに賛同してくれた。基本的に野村證券では、どのようにビジネスを行うかは、個人の裁量に大きく委ねられている。「早速、法務に詳しい同僚、英国法弁護士事務所、支店の営業担当者と、プロジェクトを進めることにしました」。

海外とも連携し、販売者以上のサービスを提供。

実際の作業はいくつかに分類された。まず、仕組債の価値を査定すること。「野村證券が買い取った場合のリスクは?」、「どのようなヘッジ方法があるのか」、「最終的にどのような形で他の当事者と合意し、収益につなげていくのか」。様々なシナリオを想定してシミュレーションを行い、当社としても買い取りができるように社内調整を進めていった。「並行して、地方銀行のご担当者様が、自行内で調査分析報告するためのフォローも行いました。マーケットにおいて、現時点でどれくらいの価値があるのか、権利関係はどうなっているか、損益はどの程度か。毎日のように電話をするなかで、先方が検討に際して必要と思われる情報や論点を先回りして提供し、専門家としての立場からサポートを行いました」。「野村證券さんは販売責任者ではないのに、それに相当するサービスを提供してくれている」と、お客様にも評価していただき、連帯感も生まれていった。

一方、英国のSPCやトラスティー、他の債権者との交渉では、海外拠点にいる法務担当者や英国法弁護士事務所との連携が威力を発揮した。「この取引に関して、どこからどこまでが誰の権利なのか。資産をどう分けることが妥当なのか。そういったことを、日本とロンドンのオフィスが協働で確認し、相手方から情報収集して、障壁をひとつひとつクリアしていきました」。

「感謝の気持ちを持ったのは自分自身も同じでした」

「プロジェクトの後半でお客様のもとに伺い、仕組債の状況と、当社が査定した価値と市場リスク、法務リスク、その背景を直接ご説明し、意見交換をしました」。飛行機と車を乗り継いで地方都市にいるお客様のもとを訪れると、担当者、部長、リスク管理部門の方々が迎えてくれた。そして「数日後に、両者が納得した価格で買い取りをすることが決定しました」。

その後、地方銀行の担当者から、「不良債権処理というセンシティブな案件でしたが、おかげで適切に乗り切ることができました。大変ありがとうございました」というお言葉をいただいた。

「金融機関のお客様と仕事をする際、我々は基本的に同業他社との比較にさらされています。そして、案件の提案力やハンドリングに対して評価を受ける立場にいると思います。ただ、この案件においては『評価』に加えて『感謝』をいただいたように感じています」。だが「感謝の気持ちを持ったのは自分自身も同じでした」と言う。「ちょうど金融危機の後で、お客様から厳しいお言葉をいただくことも多い時期でしたが、自分たちの仕事は確かにお客様の役に立っている、と元気づけられる思いがしたのです。グローバル金融市場での仕事や金融危機の際に培った専門性を国内の投資家の問題解決という別の場所で役立てることができた、という充足感もありました」。そして「グローバルのフランチャイズと国内基盤の両方を持つ当社は、海外事業だけでなく、日本国内においてもまだ成長・貢献の余地がある」と新たな可能性も感じた。「野村證券には、自由度がある環境の中で、自ら機会を創造し、知識・経験を蓄積することができるという風土があります。自分と会社、会社と社会が相互に成長し合える環境の中で、プロとして付加価値を提供し続けていきたいと思っています」。

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