い、る。
1998

お客様の人生に心から向き合う大切さを、
全国の後輩たちに伝えていきたい。

野村證券の営業部門では近年、お客様との関わり方について更なる深化を目指している。資産運用に関するお客様のニーズは一層多様化しており、株式や債券、投資信託などの金融商品を提案するだけでは、もはやお客様の信頼や満足を得ることは難しい。そこでお客様一人ひとりのニーズに寄り添い、長期的な時間軸で関係性を深めていくコンサルティング力を強化しようとしているのだ。そうしたコンサルティング主体のスタイルを、地域に密着した働き方を通じて追求し、周囲に影響を与え、大きな成果を上げてきたのが、現在、支店長を務める平野和枝だ。一児の母でもある彼女のこれまでのキャリアの軌跡を追う。

上司のアドバイスが、私を救ってくれた。

平野の野村證券でのキャリアは約20年に及ぶ。九州で生まれ育ち、地元の大学を卒業した彼女は、慣れ親しんだ土地で社会人をスタートしたいと故郷での就職を希望した。「それまでアルバイトも経験したことがなく、まったく世間知らずの大学生でした。金融志望だったわけでもなく、就職活動も当初は戸惑いましたが、新聞を読むことが好きで、政治や経済などの動きに関心がありました。そうした自分の興味を反映できる仕事は何だろうと大学のゼミの教授に相談したところ、政治や経済の動向と密接に関わり合う証券業を推薦いただいたのです」。

中でも、最も社員が輝いていると感じた野村證券に惹かれた。入社後は地元の支店に配属され、お客様への資産運用のご提案に携わることになった。しかし、当時はあまり自分の営業に自信が持てなかった。金融知識もおぼつかない中でお客様へ金融商品をご提案することに抵抗を感じていたのだ。『私にこの仕事は向いていないのかな・・・』と思い悩む日々。そんな平野を救ったのは、上司のアドバイスだった。

「不器用な私を見かねて、『平野は勉強することが好きだよね。それなら、商品について誰よりも詳しくなって、なぜこの商品が必要なのか、なぜこの商品の提案をさせていただくのかを一生懸命深く考えてお客様にお話ししたら?』と言ってくれました」。そうか、それなら私にもできるかもしれない。急に視界が開けた気がした。上司からのアドバイスが大きなヒントとなり、その後の平野の営業スタイルに変化が出始める。

本当にお客様のお役に立てる、という実感。

上司からのアドバイスを受け、平野はまず外国債券に詳しくなろうと、一生懸命勉強した。「外国債券は、金利などの市場環境をきちんと理解して適切なタイミングでご提案すれば、お客様の資産運用に大きく貢献できます。そのためには常に情報を集めて勉強しなければなりませんが、社内には様々な分野に秀でた専門家がたくさんいます。例えば支店の若手社員でも、本社のベテランのアナリストに直接電話をかけて相談できる環境がある。こうしたカルチャーがあるのも野村證券らしさだと思いますし、私も周囲からサポートしていただきながら知識を蓄えていきました」。外国債券に詳しくなった彼女は、支店の先輩や同僚からも頼られるようになる。それが嬉しくて、もっと勉強しようという意欲が湧いた。そして更に、彼女自身のお客様との接し方も変わってきたのだ。

「本当にお客様のお役に立てる、と自信を持って仕事に取り組めるようになりました。しかし、債券による運用は、すぐに結果が出るものではありません。お客様のことを考えてご提案した外国債券が、長い月日を経て満期を迎え、お客様に利益をもたらす。そうしてようやくお客様から『良いアドバイスをしてくれてありがとう』と感謝の言葉をいただく。その一連のサイクルを経験できた時、自分の仕事の意義はここにあるのだと強く感じるようになりました」。平野の長期的な時間軸でのコンサルティング・ビジネスの礎は、こうして築かれていった。

2年間の育児休暇が、
新たな気づきを与えてくれた。

自分の仕事はただ商品をご案内することではなく、お客様の資産や将来のことを一緒に考え、末永く寄り添っていくことだ。経験を重ねるにつれて平野は、そんな想いを抱くようになったという。プロとして自身を磨き続ける一方で、プライベートでは結婚、出産も経験。長女を授かったのは、入社5年目のことだった。入社当初はそれほどキャリア志向ではなかったと言うが、すでに出産を経て復帰している先輩社員から『一緒に頑張ろう』と激励を受けたこともあり、育児休暇を取得して復職することを決意した。

「子供が幼いうちはしっかり向き合って育てたいと思っていました。また、1歳ぐらいだときちんとコミュニケーションをとることができず、保育所に預けることも不安でしたので、育児休暇は2年しっかり取得させてもらいました。この2年間は母親業に専念しましたが、仕事から離れたことで『一消費者』としての立場を経験できたことは非常に良かったと思っています。それまでは平日の昼間に金融機関を訪れる機会も、ほとんどありませんでしたから」。例えば、日中、家事や子供の世話をしている時、様々なセールスの電話がかかってくる。こんな時間に連絡されても、じっくり話を聞いてくれるわけないだろうな、といった些細なことも含めて、お客様の気持ちを知る『気づき』となった。「サービスを提供されるお客様側の気持ちを、今まで以上に意識するようになりました。それは復帰してから自分の強みになったように思います」。

私自身が実感した成長を、
リーダーとして後輩たちに伝えていきたい。

ちょうど平野が復帰したタイミングで、野村證券の経営にも大きな変化があった。全社員がお客様のニーズに合わせた高いサービスを提供するコンサルティング・ビジネスに舵をきっていく方針が掲げられたのだ。平野が実践してきた営業スタイルが、まさに野村證券のスタンダードになった。「お客様とより一層深く関われるようになりましたし、『お客様の資産全体をコンサルティングする』という目的が明確になり、仕事に対するモチベーションが高まりました」。

復帰して1年後、平野は支店の社員全体をとりまとめる「ビジネスリーダー」に任命された。『いつかは自分もその役を』と考えてはいたが、いざ指名されると不安を覚えた。「果たして自分にビジネスリーダーが務まるだろうかと、最初は大きなプレッシャーを感じました。ただ、私自身が実感した成長を、今度は後輩たちに味わってほしい。お客様にとって必要な存在であるために、自身を高めていくことの喜びを伝えていきたいと、そんな想いでリーダー職に臨みました」。

しかし、いくらきれいごとを言っても、率先垂範で成果を残さなければ、誰もついてきてくれない。営業としてまずは後輩のお手本になろうと、それまで経験したことのない仕事にも積極的にチャレンジするようになった。ここからまた平野は、心に残るお客様との出会いを重ねていくことになる。

お客様の想いに触れて涙。
これが仕事の醍醐味。

「例えば当時、数百年もの歴史がある宗教法人様とお取引をさせていただいたことがありました。最初は資産運用のご相談が中心でしたが、お客様にとって何よりも大切なのは、寺院を未来永劫、存続させていくことだと理解しました。そのうえでご家族にも、適切な形で資産を引き継いでいきたい。お客様のそんな想いに応えることこそ私の役割だと考えました」。

お客様は、ご家族のことをとても気にかけていた。平野とのやりとりを通じて、最終的には遺言信託を行うことを決断。お子様たちに何を遺し、遺した資産をどのように守っていってほしいか、というメッセージを明確な形で遺すことにしたのだ。その立会人を務めたのは、平野だった。「公証人役場の方がそのメッセージを読み上げた時、お客様の切なる想いに触れて思わず涙がこぼれてきました」。

お客様の人生に心から寄り添っていけることが、この仕事の最大の醍醐味だと語る平野。他にも、経営者のお客様に向けて、将来のことを考えて事業の売却をご提案し、社内の専門部署と連携してM&Aを実行。お客様の新しい人生のお手伝いをしたこともあるという。「お客様からは『野村證券の意見を聞きたい』という声をよくいただきます。そんな時はリーディングカンパニーとしての誇りと責任を強く感じます。その期待にお応えできるよう、もっともっと自分を高めていかなければと思っています」。

決して変わらないのは
「お客様に寄り添い続ける」という想い。

入社14年目に課長に昇格。ビジネスリーダーに任命された時と同様、課長を担うことに最初は抵抗があったが、いざその立場に就くと個人で成果をあげるよりもはるかに大きな喜びがあることを知った。

社内では定期的に支店でキャンペーンが行われる。その一環として『実践してきたコンサルティング・ビジネスの力を試そう』というキャンペーンが実施された。「心からお客様のことを考えたご提案を続けていけば成果は自然とついてくる。そうメンバーたちを鼓舞して営業活動に取り組んだところ、私たちの課が見事に優勝。個人戦よりも団体戦で勝つほうがメンバーの数だけ喜びが倍増する。課長に就かなければこんな感動を味わえなかったと思います」。そして入社20年目、彼女に大きな転機が訪れる。新しい支店の支店長に抜擢されたのだ。平野も突然のことに戸惑った。

「上司から『君の可能性をもっと試せるポジションがある。検討してみないか』と。家族との時間を最優先と考えていたため、最初はお断りしました。しかし、娘が『お母さんの可能性を広げてほしい』と言ってくれたことで、自分の考えが大きく変わりました。せっかく会社や家族がこんなチャンスを与えてくれたわけですし、自分がこれまで経験したことを後進たちに繋いでいくことで会社の発展に貢献できればと、任務をお受けすることにしました」。

そして現在、平野は支店長として新しいチャレンジを重ねている。彼女が支店長に就任してから、支店内の若手の表情も変わってきた。この先、どんなキャリアが待ち構えているかわからない。しかし、どんな環境に身を置こうとも「お客様に寄り添って、お客様のことを心から考える」という軸は変わらない。その想いを周囲に波及させ、証券業を通してお客様の夢を叶えていく力になりたい。平野はまた、志を新たにしている。

平野 和枝
営業部門支店長
1998年入社