リスク・マネジメントとは
「想定外」への備え:膨大な市場情報と複雑な金融契約の分析
野村グループでは、子会社を含む各ビジネス部門において、株や為替などの金融商品及びそれらの将来価値に基づく金融派生商品を取り扱っています。また、企業の資金調達をサポートするために、ローンの提供や株式新規上場に伴うサービスも提供しています。しかし、これらの金融商品やサービスの提供は、財務上の損失やグループの評判に悪影響を及ぼす可能性を伴います。たとえば、自己資金を用いたマーケットメーク業務では、保有資産の価値変動によって損失を被るリスクがあります。また、ローン契約の相手方が債務不履行に陥った場合も、同様に損失の恐れがあります。
事業活動に付随する損失可能性を特定・分析し、適切に軽減することが野村グループの安定的な発展には必要です。この活動はリスク管理と呼ばれています。リスク・マネジメント部門は、保有資産・負債の価値変動に関連するマーケット・リスク、取引先の債務不履行によるクレジット・リスク、業務運営や手続きに伴うオペレーショナル・リスク、金融商品の価値算定に起因するモデル・リスクを管理し、グローバルな視点で業務の円滑な運営とグループ全体の信頼性維持に貢献しています。
主な業務内容
マーケット・リスク管理課
マーケット・リスク管理課では、保有資産の価値が市場要因から変動するリスクをモニタリングし、将来の損失可能性について分析します。リスクが高まればトレーダーと連携し、過剰なリスクを軽減する対策を取ります。分析結果については経営に適宜報告を行い、経営が適切に意思決定できるようにサポートを行います。
クレジット・リスク管理課
クレジット・リスク管理課では、取引先の債務不履行・倒産可能性を評価するために業界見通し、財務諸表分析、将来のキャッシュフローの創出力の評価等、取引先を多面的に分析します。プロジェクトファイナンス、航空機ファイナンス、買収ファイナンス等においては様々な契約内容の精査、ストラクチャリングにも関与します。
オペレーショナル・リスク管理課
オペレーショナル・リスク管理課では、業務プロセスやシステムにおけるリスクを把握・評価・モニタリングし、報告するための管理枠組みを構築し、リスク削減に貢献しています。会社全体の業務プロセスに関するリスク評価や分析、改善策の提案を行うため、国内外のさまざまな部署や業務に幅広く関わります。
モデル検証課
弊社では意思決定や効率的な業務運営のためにモデルを使用します。モデルは複雑な現実を抽象化しているため必ず限界が存在し、誤った使用は財務上の損失や信用悪化を引き起こし得ます。モデル検証課では、それらモデルの独立検証を実施し、適用限界を特定することでモデルに潜むリスクを管理する枠組みの設計を行います。
メソドロジー課
メソドロジー課では、主にリスク・モデルの開発や分析等のクォンツ業務を行っており、市場価格変動や債務不履行等によって生じうる損失額を定量的に評価する数理モデルの開発、内部格付モデルの開発、上記の知見を活かした規制対応、およびDXによる各種業務の自動化・省力化、リスク管理の高度化に取り組んでいます。
ストレス・テスト課
ストレス・テスト課では、景気の大幅な変動や地政学イベント・災害等のストレス要因によって想定外の損失が発生しないか、当社の資本が十分であるかを定量的に推計します。またグループ全体の統合リスク管理体制の枠組みの整備も担い、これらを通じ潜在的リスクを事前に把握し、経営が必要な対策を講じるサポートをします。
企画一課
企画一課は、野村グループの事業運営に係る様々なリスクを専門的に分析する国内外のチームメンバーと協力しながら、リスク管理の高度化に取り組んでいます。経営判断に関わる会議体の運営や、各国の金融規制・開示対応、社内ルールの整備や研修を通じて、野村グループの持続的な成長と企業価値の向上をサポートしています。
企画二課
企画二課(New Business Group)では、野村グループの取り扱う新商品やサービス及び新たな業務フロー、また比較的リスクの高い個別案件に対する事前承認のプロセスを運営します。このプロセスは、新たなリスクを適切に評価し管理するための重要な役割を担っています。
リスク・マネジメントで身につくスキル
弊社が取り扱う金融商品は多岐にわたり、市場や規制の微細な変化がリスク要因になる可能性があります。リスク管理業務を通じて、リスク要因の特定やリスク顕在化時の事業への影響分析、適切な軽減措置の設計といったスキルや感覚を磨くことができます。
効果的なリスク管理フレームワークを導入するためには、関係部署との緊密な連携が欠かせません。その過程で、高度な交渉力を身につけることも可能です。また、グローバルに展開するビジネス活動を支えるためには、英語でのコミュニケーション能力やプレゼンテーションスキルも重要です。これにより、チームでの協力を強化し、総合的なプロフェッショナルとしての成長が期待できます。